第182章 氷室龍一を探して

当初、彼が南部の辺境にあるセルマンという小都市に到着した直後は、まだ断片的ながら連絡があった。

電話越しの彼の声はいつも通り沈着冷静で、資産整理の残務処理や、現地の有力者への根回しが必要なため自ら動く必要があること、そして電波状況が悪いかもしれないが心配はいらない、と告げていた。

綾瀬美月は気掛かりではあったが、事情は理解していた。

氷室龍一の事業版図は広大であり、中にはグレーゾーンの資産洗浄や移転も絡んでいる。そのプロセスは必然的に複雑怪奇で、頻繁に連絡を取るのが憚られる局面もあるのだろう。

彼女は『初音』とライノの提携再開に向けた準備や、綾瀬陽が宮中范明の門下に入るための手続きな...

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