第185章 口づけ

 氷室龍一は、自分のために涙を流し、感情を露わにする綾瀬美月の姿を前にして、心奥にあった氷のように冷たく凝り固まった領域が、その熱い涙によって完全に溶かされていくのを感じた。

 自らの策略や最終的な勝利について、彼は一切弁解しなかった。そんなものは今、あまりに些細なことだった。彼は手を伸ばし、涙に濡れた彼女の頬をそっと包み込む。親指で優しく涙を拭うが、拭えば拭うほど、彼女の瞳からは新たな雫が溢れ出してきた。

「すまなかった……」

 低く、磁力を帯びたような声。そこには、かつてないほどの優しさが滲んでいた。

「心配をかけたな」

 その謝罪はかえって綾瀬美月の胸を締め付け、涙の勢いを増...

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