第187章 待ちきれない

言い終えると、彼はスマートに車を降り、助手席へ回ってドアを開けた。その動作は優雅で落ち着いており、先ほど車内で彼女を追い詰め、強烈な色気を振りまいていた男と同一人物とは思えないほどだった。

綾瀬美月はふらふらと車を降りた。足にはまだ力が入らない。夜風が火照った頰を少し冷ましてくれたが、心臓の鼓動は乱れたままだ。氷室龍一がトランクから簡易な荷物を取り出し、ロックをかけるのを見つめていると、彼は極めて自然に手を伸ばし、彼女の手を握った。

彼の掌は厚く暖かく、薄いタコがあった。それが彼女の手をすっぽりと包み込む。

綾瀬美月は無意識に手を引っ込めようとしたが、逆に強く握り返された。

「動くな...

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