第192章 君に狂わされた

智子は、業界内でまことしやかに囁かれている綾瀬美月と氷室龍一に関する噂を思い出した。加えて、柴門温樹の失脚の裏に桐島家と氷室龍一の影が見え隠れしていたことを考え合わせれば、合点がいく。

彼女はグラスを置くと、何気ないふうを装って微笑んだ。その瞳には、友人としての好奇心が滲んでいる。

「顔色がいいわね。今回の外出……ただ厄介事を片付けに行っただけじゃなくて、何かいい収穫もあったみたい?」

綾瀬美月は当然、その言葉の裏にある意味を悟った。頬に薄っすらと朱が差したが、あえて否定はしない。控えめな笑みを浮かべ、水を一口飲んで照れ隠しをする。

「そうね……危機一髪だったけれど、お陰で見えたもの...

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