第20章 彼女の帰りを待つ

綾瀬美月というコネ入社の謎めいた女に、どんな経歴があるというのか。能力に至っては論外だ。たった一日、それも書類整理のような雑用をこなしただけで、何がわかるというのか。

夏目洋二はそんな腹の底をおくびにも出さず、平然と言ってのけた。

彼は分厚いプロジェクト資料を、どさりと綾瀬美月の前に置いた。

「これが前期資料の全てと、コンセプトの方向性、それからクライアントの要望書です。時間はあまりないんですが、先方は来週にはラフなコンセプト案を見たいそうでしてね。どうです……いけそうですか?」

実に巧妙な手口だった。

重要案件を任せることで好意を示しつつ、前任者が白石麻里奈だったこの案件を振るこ...

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