第215章 騙された

プライベートジェットは雲層を突き抜け、成層圏を滑るように飛行していた。

機内には重苦しい空気が漂っている。本革のシートに深く身を預けた桐島蓮は、当初の動揺と、救出への焦燥に駆られた熱情がいくぶん冷め、理性が戻りつつあるのを感じていた。

おかしい。

決定的に、何かがおかしい。

綾瀬美月からのあのSOS、タイミングがあまりにも出来すぎている。

政略結婚の噂を巡って激しく衝突し、岡林時子が彼女に嫌がらせをした直後に、「誘拐された」だと?

しかも、発信元の位置情報はあろうことか「セルマン」――氷室龍一が長年かけて築き上げた、奴の根城とも言える無法地帯だ。

ふと、既視感を覚えた。

かつ...

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