第229章 ハルを起こさないで

氷室龍一の掌は、火傷しそうなほどの熱を帯びていた。微かにタコのある指先が、彼女の滑らかな背筋を這い回り、そのたびに綾瀬美月の背中に甘い震えが走る。彼の唇は顎から首筋へと滑り落ち、濡れた熱い痕跡を残していく。

綾瀬美月は冷やりとしたタイル壁に押し付けられていた。背中の冷たさと、正面から押し寄せる彼の滾るような体温。その氷と炎の狭間で、彼女の意識は朦朧としていく。ただ無力に彼にしがみつき、翻弄されるがままに身を委ねるしかなかった。

氷室龍一は彼女の耳朶を甘噛みし、低く囁く。

「愛しい人、俺の名前を呼んでくれ」

「龍一……」

無意識に溢れたその声は、シャワーの水音と荒い息遣いにかき消され...

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