第24章 綾瀬様は顔を立ててくれない

いつまでも子供を職場に連れていくわけにはいかない。一歩踏み込んだ調査を行うためには、どうしても単独行動の時間が必要だった。

その日、彼女は綾瀬陽をニコルに預け、万が一の時はすぐに連絡するよう何度も念を押してから、ブリーフケースを手に家を出た。

向かった先は会社ではなく、都心の図書館だ。「シリウス不動産」およびそのプロジェクト責任者である周藤稔に関する公開資料や業界記事を、洗いざらい調べるためである。

周藤稔は叩き上げの不動産王であり、その毒辣なまでの審美眼、妥協なき要求、そして独特な仕事の流儀で知られている。

記事によれば、彼は熱心な芸術収集家でもあり、特にインパクトのある型破りなデ...

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