第250章 氷室龍一の弱点

雑種――。

その一言が、綾瀬美月の胸の奥に燻っていた怒りに、完全に火を点けた。

自分がどれだけ侮られようと耐えるつもりでいた。けれど、息子を罵る言葉だけは、断じて見過ごせない。

柴門理沙の口からその罵倒がこぼれ落ちた、まさにその刹那。

綾瀬美月の右手が、稲妻のような速さで跳ね上がる。

次の瞬間、柴門理沙の頬に、容赦のない平手打ちが叩き込まれた。

「パァンッ!」

乾いた、しかしやけに鮮やかな音が、周囲の空気を震わせる。

柴門理沙の頭ががくりと横に弾かれ、白い頬にくっきりと五本の指の跡が浮かび上がった。彼女は呆然と頬を押さえ、美月を見上げて目を見開く。

「あ、あんた……よくもア...

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