第257章 氷室龍一の胸に抱かれることを強いられて

綾瀬美月は、ぱちんと意識を切り替えるように気持ちを立て直し、さっきまでの気まずさを頭の隅へと追いやった。身をわずかに乗り出しながら問いかける。

「本当? そんなに早く? どんな先生なの?」

「名前はダニエル」

神崎美咲が答える。

「腹部の複雑外傷と、その後遺症のケアでは、国際的に認められてる権威よ」

「ダニエル……」

綾瀬美月は、心の中でその名をなぞるように繰り返し、そっと胸の内に刻みつけた。

胸の奥底に、ちいさな光のような希望がふっと灯る。

話を聞く限り、今、手を伸ばせる中ではほとんど理想的と言っていい専門家だ。

「ただね」

神崎美咲はそこで言葉の向きを変え、肩をすくめ...

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