第268章 乾杯

白石紀香が、盛装を凝らした若い女の腕を取って、胸をそらせるようにして会場へ入ってきた。

女は高そうなドレスを身にまとい、念入りに化粧も施している。刑務所暮らしの三年は、彼女から多くのものを奪っていったが、それでも必死に背筋を伸ばし、かつての、甘やかされて育った令嬢特有の気高さと、どこか傲慢さを含んだ立ち居振る舞いをなぞろうとしていた。

白石麻里奈の顔をした――本物の白石麻里奈。

白石紀香の顔には、長年の鬱憤を晴らすかのような、あからさまな得意げな色が浮かんでいた。まるで「娘」を連れて、再び上流社交界に凱旋したとでも言いたげに。わざと娘の腕を取り、人だかりの中を練り歩きながら挨拶を交わし...

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