第271章 梨山順子の旅立ち

彼女はその場で完全に固まり、瞳の奥にかすかに揺れていた光さえ、ぷつりと消えた。残ったのは、底なしの絶望と狂気だけ。

「違う……違うのよ、麻里奈じゃない……梨山順子よ……証拠だって……」

うわ言のように呟き続ける口元を、警官の手が無造作に塞ぐ。白石紀香は、まるで死んだ犬でも引きずっていくかのように、床をずるずると曳かれていった。

一方、両脇を固められた白石麻里奈は、その声をはっきりと聞いた。

まだ梨山順子を身代わりにしようと足掻く姉に、ぎろりと怨毒の一瞥をくれてから、荒れ果てた会場と、死人のような顔色の岡林時子へと視線を移す。

その唇に、復讐を果たした者だけが浮かべる、歪んだ快楽の笑...

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