第277章 私は子どもがほしい

「分かってる」

綾瀬陽は小さくうなずいた。

「でも俺は、過去じゃなくて、今とこれからを生きたいんだ」

綾瀬美月の目のふちが、じんわりと熱くなる。

彼女はそっと氷室龍一の手を取り、それから陽の頭を撫でた。

「そう……陽が心から選んだ道なら、ママは全部応援するわ」

夕食は続いている。けれど、空気はどこか微妙に変わっていた。

綾瀬陽は、ごく自然に氷室龍一のことを「パパ」と呼び始めた。

氷室龍一も、その呼びかけに応じる声が、次第にぎこちなさを失っていく。まるで、その二文字に返事をする練習を、心の中で何百回も繰り返してきたかのように。

レストランの外。

桐島蓮は歩道の端に立ち、煙草...

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