第278章 あなたの心にはまだ彼女がいる

桐島蓮はゆっくりと顔を上げた。瞳の底は、どうしようもない自己嫌悪と痛みで満ちている。

「……南太平洋でのこと、でしょ?」

岡林時子の声は驚くほど静かだった。けれど、その一語一句が、槌のように桐島蓮の胸を打つ。

「あの夜……あの人に、何をされたのか……」

桐島蓮の瞳孔が、きゅっと縮む。

彼女は何も知らない。細かい経緯までは、少なくとも全ては知らない──そう思い込んでいた。

「お父さんが調べたの」

岡林時子は正直に告げた。

「あなたを嵌めた黒幕を突き止めるために、持てるコネを全部使ったって。だから私、知ってるの……あなたが、どんな目に遭ったのか」

そっと伸ばされた彼女の指先が、...

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