第280章 君を送り出す

天坂健はスマホを握りしめたまま、ホテルのバスルームに身を潜めていた。声をできるかぎり押し殺す。

「先生、写真はもう送りましたよ。今、ネット中が綾瀬美月の枕営業だって叩いてます。俺、今回ほんと犠牲デカいんですけど――役は飛ぶわ、事務所からは契約解除って言われるわ、スポンサーも全部切られそうで!」

受話器の向こうから聞こえてきた岡林時子の声は、ボイスチェンジャーにかけられていて男女の区別もつかない。それでも、そこに満足げな色が宿っていることはありありと分かった。

「よくやったわ。金はもうあなたのスイス口座に振り込んである。国外でやり直すには十分な額よ」

「じゃあ、俺の出国の段取りは?」天...

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