第289章 ザカの逃亡

日裏誠はちらりと氷室龍一に視線を送った。主がごくわずかにうなずくのを確かめてから、花束を受け取る。

「ありがとうございます、議員」

「それじゃ、私はこれで失礼します」

デイヴィは丁寧に頭を下げた。「綾瀬さん、氷室様、また改めて」

そう言って彼は背を向ける。足取りは終始悠然としていて、本当にただ花束を届けて挨拶に来ただけ──そう言わんばかりだった。

回転ドアの向こうへその姿が消えて、ようやくロビーの圧がふっと緩む。

氷室龍一は横目で日裏誠を見やり、小声で告げた。

「その花は捨てろ。念入りに調べておけ」

「了解しました」

日裏誠はすぐさま花束を抱えてロビーを後にする。

綾瀬美...

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