第30章 欲しいのは桐島蓮の一滴の血

彼女の尊厳、自由、そして父の命と引き換えに得た富など、彼女にとってはただ汚らわしいものでしかなかった。

桐島源蔵はしばし沈黙した。孫の愚かな振る舞いが招いた結果に、胸の内の罪悪感がいっそう深まるのを感じていた。

彼は重い口を開いた。

「いかん。桐島家として、お前とハルをそのような冷遇をするわけにはいかん。弁護士に協議書を作り直させ、ワシ名義の株と不動産の一部をお前に……」

「お祖父様!」

綾瀬美月は彼の言葉を遮った。その瞳には、頑ななまでの純粋さが宿っていた。

「本当にいりません。もし、私に負い目を感じてくださるのなら」

彼女は一呼吸置き、桐島源蔵にとって全く予想外の願いを口に...

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