第314章 シュエットが訪ねてくる

桐島蓮は涙でぐしゃぐしゃになった彼女のメイクを見つめた。無表情のまま、何も説明する必要など感じていなかった。

結婚を決め、彼女と共に生きていく覚悟は確かにあった。

だが、岡林時子自身がそれに満足しなかったのだ。

彼は身を翻して個室を後にし、床にへたり込む男女を一瞥だにすらしなかった。

廊下の突き当たりには、大旗俊夫が待機していた。

「桐島社長、ヒルトンホテルから報告が。シュエットが……姿を消したとのことです」

桐島蓮の足が止まった。「いつだ?」

「わずか三十分前です。我々の見張りがついていたのですが、裏口の非常階段から抜け出されました。監視カメラも全て回避されています」大旗俊夫...

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