第37章 彼の裏切り

数時間後、クルーザーは海図に記されていた無人島へと接近した。

島は大きくはないが、植物が鬱蒼と茂っており、人の気配は皆無だ。それでも、最低限の雨風を凌ぐ場所と淡水は確保できそうだった。

「あいつを降ろして」

綾瀬美月が唐突に口を開いた。その口調には、有無を言わせぬ響きがあった。

氷室龍一と船員たちは一瞬呆気にとられ、氷室龍一に視線を向けた。

氷室龍一は片眉を上げ、意外そうにしつつも、どこか納得したように頷く。

「ここでか? まだ目覚めてないぞ」

「死ななきゃいいわ」

綾瀬美月の声は、凪いだ水面のように波紋一つ立たなかった。

「最低限の薬品と水、食料を残して。目立つ安全な場所...

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