第59章 姫野アリスのスキャンダル

彼は背後に控える大旗俊夫に振り向き、低い声で命じた。

「大旗、ホットジンジャーを一杯用意しろ」

続いて綾瀬美月に視線を移す。命令口調だが、そこには不器用で奇妙な気遣いが滲んでいた。

「具合が悪いなら無理をするな。休憩室に仮眠用の椅子がある、少し横になってこい。その書類は……」

彼は机上の『シリウス・プロジェクト』の資料を指差した。

「急ぎじゃない。午後に回せ」

その一部始終を、ちょうど執務室から出てきた白石麻里奈が目撃していた。

桐島蓮が綾瀬美月のデスクの前に立ち、眉を寄せて案じている姿。

そればかりか、特佐に命じてわざわざ綾瀬美月のために甘いホットドリンクを用意させ、休息ま...

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