第66章 氷室龍一が消えた

綾瀬美月は顔を上げ、彼の視線を真っ向から受け止めた。

「結構です。桐島社長のお気遣いは感謝しますが、これは私自身の問題です。自分で対処します」

もうこれ以上、彼に借りを作りたくない。ましてや、感情的な貸し借りなど御免だった。

二人の関係は、とうの昔に互いを頼れるようなものではなくなっているのだから。

「自分で対処する、だと?」

桐島蓮はまるで笑い話でも聞いたかのように、口元に冷ややかな弧を描いた。

「今日、君が運良く助かったとして、次はどうだ? 綾瀬美月、強がりもいい加減にしろ」

その時、ずっと沈黙を守っていた橘奏太が鼻で笑った。張り詰めた空気の中で、その嘲笑はあまりに鮮明に響...

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