第77章 新しい隣人

遊園地で綾瀬陽と思い切り遊び回ったせいで、小さな彼は帰りの車内ですっかり夢の中へ落ちてしまった。

綾瀬美月はずっしりと重い息子を抱きかかえた。腕は痺れて感覚がなくなりかけていたが、胸の奥は得難い安らぎと充足感で満たされていた。

マンションの自室がある階に着き、エレベーターを降りた瞬間、彼女は思わず足を止めた。

ずっと空室だった真向かいの部屋のドアが大きく開け放たれ、中から家具を動かす物音が響いてくる。統一された作業服を着た数人の業者が、忙しなく出入りしていた。

ここは桐島ホールディングスが幹部向けに提供している高級社宅だ。セキュリティもプライバシー保護も万全で、ここに入居できるのはグ...

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