第81章 一晩の宿を借りる

桐島蓮は車内に残り、彼女の拒絶そのもののような背中が別の車の向こうへ消えていくのを見送った。

直後、隣の助手席にある本革のシートに拳を叩きつける。

車内に鈍い音が響き渡り、空気は窒息しそうなほど重く張り詰めた。

赤の他人?

彼女は俺に、赤の他人になれと言ったのか?

ふざけるな!

タクシーがマンションの下に停まった時、すでに夜は深まっていた。

都市の喧騒は沈殿し、残っているのは路灯の頼りない光の輪と、時折通り過ぎる車の走行音だけだ。

綾瀬美月は料金を払って車を降りた。夜風が涼気を運んでくる。パーティーで纏わりついた焦燥感と、桐島蓮との対峙で消耗した疲労が、風に少しだけさらわれて...

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