第10章

芽衣ははっと目を上げた。耳の奥がじんじん鳴っている。

そんなことまで言うの?

ほかの男を当たれ――それどころか、二人まとめてでもいい、なんて。

瞳孔がきゅっと縮む。声がわずかに震えた。

「髙野拓海……あなた、私にそう言うの?」

心臓を乱暴に握り潰されたみたいで息ができない。芽衣は今にも窒息しそうだった。

どれだけ興味がなくても、妻に向かって口にしていい言葉じゃない。

髙野拓海は冷えきった目でしばらく彼女を見てから言い捨てた。

「小切手はちゃんと受け取れ。もう話すことはない」

踵を返し、大股で去っていく。

いつだってそうだ。

彼は芽衣と林谷由佳の間で、迷いなく林谷由佳を選...

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