第102章 私だけが嫌っていい

熱い湯が二人の身体を容赦なく叩き、立ちのぼる白い湯気が星野芽衣の視界をぼかしていく。

それでも――髙野拓海の瞳の奥で渦巻く剣呑な色だけは、はっきり見えた。

彼が掴む芽衣の手首に、じわじわと力が籠もる。骨が砕けるんじゃないかと思うほど、指が食い込んだ。

芽衣の投げやりな言葉を聞いても、拓海の苛立ちは収まるどころか、さらに燃え上がる。

彼は身を屈め、赤くなった彼女の眉間に額を押し当てた。冷え切った声音が、硬く落ちる。

「お前がどんな女かくらい、俺が一番わかってる」

その次の言葉は、刃だった。

「星野芽衣。覚えとけ。お前に俺を嫌がる資格はない。嫌うべきなのは俺のほうだ。――汚いってな...

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