第104章

真っ赤な、生ぬるい血の粒が一気に噴き出した。刃を伝ってぽた、ぽたと落ち、地面を濡らしていく。

髙野拓海の身体がぐらりと揺れる。背筋を張り詰めたまま、彼はその一撃を真正面から受け止めた。

奥歯を噛み締め、声ひとつ漏らさない。大きな背中で星野芽衣を庇い、ありとあらゆる危険を遮断するように立ち塞がる。

夜は重く沈み、芽衣は彼に背を向けたまま――最後まで、何ひとつ知らなかった。

背後で起きた異変に気づいたのは、ただ音がしたからだ。殺し屋が詰めてきたのだと勘違いし、胸の奥がひゅっと冷える。反射的に前へ二歩、逃げるように踏み出し、振り返りもしない。

顔に傷のある男は仕留め損ね、血と肉でぐしゃぐ...

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