第106章

その日。

髙野爺さんはわざわざ人づてに伝言を寄こし、髙野拓海に「週末は星野芽衣を連れて実家へ戻り、いっしょに食事をしろ」と言いつけた。

だが拓海が髙野家へ戻ったのは、一人きりだった。

広いリビング。ソファに背筋を伸ばして座る髙野爺さんの視線が、拓海の背後――空っぽの空間をなぞった瞬間、眉間に深い皺が刻まれる。

「芽衣はどうした?」

不機嫌さを隠しもしない声だった。

「芽衣も連れて来いと言っただろう。どこにいる。お前たち、また揉めたのか? 若い連中は『忙しい忙しい』って口を開けばそればかりだが、いったい何がそんなに大事なんだ」

詰問を浴びても、拓海の表情は薄いまま動かない。

「...

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