第117章

彼女は、隣で眠り込んでいる男をじっと見つめた。唇がわずかに震える。胸の奥に何年も渦巻いてきた疑問は、いまだ答えの形を結ばないまま。

そのとき。

枕元のスマホが、ぶるぶると突然震えた。

画面に浮かんだのは、寮からの着信。

星野芽衣は目を揺らし、着信音で髙野拓海を起こしてしまわないよう、身を翻してそっと通話に出た。

受話口から飛び込んできたのは、当直の担当者の切迫した声だった。寮で急な点検が入ったので、今すぐ戻って対応してほしい。猶予はない、と。

芽衣は視線を落とし、穏やかに眠る髙野拓海を見た。瞳の奥で、複雑な感情が波立つ。

昨夜の熱はまだ胸に残っている。けれど、今はここに留まって...

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