第118章

一方――。

星野芽衣は女子寮へ向かって足早に戻っていた。胸の奥には、昨夜、髙野拓海と絡み合ったあとの熱がまだ残っている。

不器用なくせに、どこまでも慎重に彼女に合わせてくれたこと。

指を絡めたまま、低い声で「ごめん」と繰り返した、あの優しい謝罪。

それが何度も何度も、頭の中で蘇る。

長いあいだ沈みきっていた心の水面が、気づけば甘い波紋を幾重にも広げていた。

――また、生き返ったみたい。

言葉で「好きだ」と告げられなくても、肌が触れ合ったときの確かな優しさは、嘘をつけない。

きっと、彼も――好きなんだ。

寮に着いた頃には、もう昼近かった。

一晩のもつれと移動の疲れが一気に押...

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