第12章 離婚したくないならしなくていい

芽衣は鼻で笑った。

「何を心配してるの。私、あんたと奪い合うほど暇じゃないのよ。役に立たない男がそんなに好きなら、どうぞ差し上げるわ」

言い終えた瞬間、背後からひやりとした気配が差し込んできた。

振り返ると、髙野拓海がいつからそこにいたのか分からない。漆黒の瞳の奥で、荒い殺気が渦巻いている。

芽衣は怯まず、まっすぐに睨み返した。微塵の後ろめたさもない。

「何よ。その目。私に不機嫌ぶつけたって、あんたが役に立たないって事実は消えないけど?」

ガラス扉を出たばかりの竹村茜が、その言葉をはっきり聞き取って足を止めた。

空気が、すとんと落ちたように静まり返る。

……嘘でしょ。今の、芽...

ログインして続きを読む