第120章

市立中央病院の特別病室。

林谷由佳は柔らかな枕に身を預けていた。重い病を乗り越えたばかりの顔色はまだ青白い。それでも瞳の奥には、かすかな安堵と、相手に寄りかかるような信頼が絡みついている。

さっき髙野拓海が低い声で告げた言葉――一生責任を取る、絶対に離れない――それが今も耳の奥に残っていた。あの約束こそが、彼女が痛みを耐え抜くための支えだった。

細い指が、彼の袖口をそっと握る。まるで彼の一生を掴み取るみたいに。

その時。

受話口の向こうから飛んできた下野千秋の一言が、髙野拓海の平静を一瞬で粉々にした。

脳裏に真っ先に蘇ったのは、昼間、廊下で見たあの眩い光景だ。

星野芽衣が背伸び...

ログインして続きを読む