第30章 成った

芽衣は彼らを相手にすることなく、手にしたフルーツジュースを持ったままくるりと踵を返すと、パーティー会場の隅――人のいないほうへまっすぐ歩いていった。今夜は静かな場所を見つけて、息を潜めるようにやり過ごすつもりだった。

だが執事はそれを見て、ますます図に乗る。小走りで追いすがり、わざとらしく声を張り上げた。

「おい、止まれ! 俺が話してるのが聞こえねえのか? 隅っこに逃げるつもりか!」

嘲りが隠しきれない声音。

「髙野夫人の看板をぶら下げてりゃ偉いとでも思ってんのか。分かりきってるだろ、髙野さんはお前なんか愛しちゃいない。放ったらかしだ。お前みたいな名ばかりの夫人、俺たちの目には何の価...

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