第41章 冷酷な人

トイレの扉は、しばらく固く閉ざされたままだった。芽衣は冷たい水で火照った頬をぱしゃぱしゃと叩き、胸の底からせり上がる動揺を、どうにか押し込める。

鏡の中の頬はまだ赤い。さっき髙野拓海と抱き合ってしまった、その光景が脳裏をよぎるたび、思わず拳を握り締めた。

――ただの悪夢が呼んだ事故。もうすぐ離婚するのに、こんな男に、これ以上余計な気持ちを持つべきじゃない。

気持ちを整えてトイレを出ると、髙野拓海はもう寝室にいなかった。ベッドの掛け布団が少し乱れているだけで、確かに、さっきまでここにいたのだと分かる。

ナイトテーブルの小切手は、相変わらずきれいに置かれたまま。持って行っていない。

芽...

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