第42章 何が好きか

林谷由佳は確信していた。あの時――芽衣が高橋大和に襲われかけた件は、あまりにも口にできないほど恥辱だ。そんなこと、こんな大勢の前で芽衣が言い出せるはずがない。だからこそ、誕生日パーティーでここまで図々しく芝居を打てたのだ。

周囲から飛んでくるひそひそ声と指差し。芽衣の纏う空気は、みるみる冷え切っていく。

竹村茜がついに堪えきれず、高橋大和を指さして怒鳴りつけた。

「いい加減にしなさいよ! 嘘つき! 品性が腐ってるのはあんたのほうでしょ! 出所してから芽衣を脅して金をせびってたくせに! 耳のことだって、芽衣の正当防衛じゃない。よく被害者ぶれるわね!」

「みんな騙されないで! 芽衣はあい...

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