第57章 一線を画す

林谷由佳の指先が、抑えきれないほど小さく震えた。

瞳の奥には瞬く間に涙が溜まり、彼女は髙野拓海の上着の裾をぎゅっと掴む。縫ったばかりの掌の傷が引きつれ、痛みで顔色がさらに青ざめたのに、手を離すどころか、胸元に深く顔を埋めた。

「拓海……私だって、こうするしかなかったの……本当に不安で、不安で……」

肩が細かく揺れ、涙が拓海の胸元の布をじわりと濡らしていく。

「前は、拓海の心の中には私しかいなかった。何をするにも私の味方で……私が間違っても、庇ってくれて、許してくれた」

「なのに最近、どうしてか全部変わっちゃった……芽衣を見る目が違う。お母さんのことだって、あんなふうに冷たくて……怖...

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