第76章 懲りない

ここは高層階。しかも扉も窓もきっちり閉まっている。外へ出られるはずがなかった。

髙野拓海は顔を強張らせたまま、視線を寝室の隅々へ走らせる。クローゼット、浴室、ベッドの下――次々と確かめても、どこにも人影はない。

胸の奥の疑念が、じわじわと濃くなる。

彼は反射的に顔を上げ、寝室と繋がるベランダへ目を向けた。

足早に近づき、重たいカーテンを乱暴に引き開ける。

次の瞬間、髙野拓海の瞳がきゅっと縮んだ。心臓が、ひやりと宙に浮く。

狭いベランダの手すりの際に、星野芽衣が立っていた。

部屋に背を向け、身体を手すりにぴたりと寄せたまま、上半身が今にも外へ滑り出しそうな角度。足元には、数十メー...

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