第86章 満点

彼女は身にまとった上質なドレスの裾をそっと整え、得意げに言った。

「このあと、わたしがステージでヴァイオリンを弾くの。拓海兄さん、わざわざ見に来てくれるんだよ」

林谷由佳はちらりと星野芽衣を窺い、怒りでも悔しさでもいい、何かしら感情が揺れる瞬間を見たかった。

今日は髙野拓海に、星野芽衣との格の違いを徹底的に思い知らせてやる――そのつもりだった。

けれど星野芽衣は淡く一瞥しただけで、何も言わない。

林谷由佳は「悔しくて言葉も出ないんだ」と勝手に解釈し、これ以上相手にするのも面倒だとばかりに、鼻で笑って背を向けた。そして得意げに、ステージへ。

ほどなくして、ホールいっぱいにヴァイオリ...

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