第94章 好き

星野芽衣は、差し出されたギフトボックスを呆然と見つめたまま、反応を忘れていた。

――これを、私に?

荒唐無稽で、信じがたい。

数秒の戸惑いのあと、星野芽衣ははっと我に返り、反射的に半歩退く。きっぱりと手を上げた。

「いらない」

髙野拓海が箱を差し出す手が、わずかに止まる。

「理由がないもの」星野芽衣は顔を上げ、彼をまっすぐ見た。目の奥から余計な感情がすっと引き、残ったのは距離を置いた静けさだけだった。「髙野拓海。私たち、もう関わるべきじゃない。あなたのプレゼントを受け取る資格もないし、必要もない」

「渡す相手、私じゃないでしょ」

あの日のもつれは、最後の迷いだった。

彼女は...

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