第5章

杏奈の視点

 翌朝、目を覚ましたのは政司のベッドの上だった。

 全身がぎしぎし痛む。

 彼はもう部屋にいない。ナイトテーブルには走り書きのメモが一枚、力強い字でこうあった。

『トレーニング行ってくる。朝メシはレンジ。暗証番号はお前の誕生日。何かあったら電話しろ。――』

 それを眺めていると、勝手に口元がゆるんだ。

 暗証番号が私の誕生日って。あのクソ男、いつの間に覚えたのよ。

 軽く身支度を整えてから、政司がアシスタントに届けさせた新しい服に着替える。黒のタートルネックに、ダークグレーのプリーツスカート。シンプルで、変に気負わなくて済む組み合わせだ。

 スマホを手に取ると、画...

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