第8章

「……何の用?」私は手の中の写真を、ぎゅっと握りしめた。

 政司は長い沈黙のあと、ようやく大きく息を吸う。

「三年前の冬、お前……川辺で死にかけたろ」

 心臓が、どくん、と跳ねた。

「助けたのは俺だ」政司が私を見る。灰色の瞳の奥に、痛みが滲んでいた。

「貴利じゃない」

 世界が、すっと静まり返った。

 自分の鼓動だけが聞こえる。どくん、どくん。胸の内側から飛び出してきそうなくらいに。

「……は? いま、なんて……」

 政司は窓辺へ歩き、背中を向けた。肩は強張り、両手はズボンのポケットに突っ込まれている。

「その夜、お前……養父母と大喧嘩した」声が低い。

「入院して検査し...

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