第104章 変な思いを抱いた

松本蘭珠はそれ以上何も言わず、足を踏み出してクラブの中へ入っていった。

相馬寧は彼女の隣を歩き、三人で個室へ向かう。中では、すでに取引先が待っていた。

相馬寧が商談に同席するのはこれが初めてだ。緊張しないはずがない。

それでも、佐野副社長と秘書の松本蘭珠が目の前にいるおかげで、なんとか平静を保てていた。

――が、席に着いた途端、取引先の男が相馬寧をじっと見据えた。

「こちらの方は?」

相馬寧を指し、首をかしげる。

「どこかで見た気がするんだが……思い出せない。君たちの会社の人かい?」

「太田社長、はじめまして」

相馬寧は慌てて手を差し出し、自己紹介をしようとした。だが、その...

ログインして続きを読む