第19章 あまりにもあっさりと去る

彼の視線が相馬寧をかすめ、そこで一瞬止まった。眉がわずかに寄る。

――なぜだろう。あの背中、どこかで見た気がする。やけに見覚えがあるのに、肝心の「いつ」が思い出せない。

「蒼河兄さん、どうしたの?」

夏目茉莉は守屋蒼河の視線の先を追った。黒いドレスの女が足早に去っていくのが見えただけで、ほかに目立った異変はない。

「相馬寧を見た気がする」

守屋蒼河は、消えかけたその後ろ姿をなおも凝視し、確かめるように追いかけようとした。

だが、夏目茉莉が彼の腕をぐいと掴んで引き止める。くすっと笑った声には、露骨な嘲りが滲んでいた。

「蒼河兄さん。あの黒いドレスの女が相馬姉さん? 冗談でしょ。相...

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