第31章 420億、もうない

守屋蒼河の下で働いていた頃、相馬寧は熱が41度近くまで上がってもなお、出勤を強いられたことがあった。守屋蒼河の言い分は、いかにももっともらしかった。

 PLである以上、相馬寧は休むわけにはいかない。

 彼女が抜ければチームは瓦解する。下手をすれば何百万、何千万という商機に影響が出る。その損失は誰が負うのか――と。

 笑ってしまうのは、当時の相馬寧がそれを本気で筋の通った話だと思っていたことだ。

 今になって振り返れば、あの男にあそこまで使い潰されても、少しも理不尽ではなかったのかもしれない。自分が愚かだっただけだ。

 相馬寧に大事がないとわかり、古沢信弘の表情もいくらか和らいだ。

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