第34章 いいものを少し届ける

相馬寧が階下へ降りると、案の定、少し離れた場所に古沢信弘の車が停まっていた。

幸い、足の怪我は大したことがない。歩くと少しだけ跛が出るものの、よほど注意して見なければ気づかれない程度だ。

古沢信弘は車のドアにもたれ、指先に煙草を挟んでいた。

たゆたう煙の向こうで、その横顔はいっそう鋭く、冷たく見える。

相馬寧の姿に気づくと、彼は煙草をもみ消して脇のゴミ箱へ放り込み、ドアを開けた。

「乗れ」

相馬寧は車内へ滑り込み、古沢信弘はその向かいに腰を下ろした。

車内には長い沈黙が落ちる。

あまりにも長くて、相馬寧は、この人はもう何も聞かないつもりなのかもしれない――そんなふうに思った。...

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