第88章 おめでとう、釈放されたね

相馬寧は笑みを浮かべたまま店に入った。だが、視界に入った人物を見た瞬間――その笑顔が、すっと消える。

誰……? どうしてこんなに見覚えがある?

まさか――。

女が振り返った。相馬寧の呼吸が、ひゅっと止まる。

夏目茉莉。

同時に、夏目茉莉も相馬寧に気づいた。

二人とも、呆けたように一瞬固まる。

相馬寧は記憶を手繰った。夏目茉莉に最後に会ったのは、ずいぶん前だ。たしか会社で――。

役に立つどころか、余計なことばかりして場をかき回し、周囲の不満を買っていた。やがて彼女は会社を去り、相馬寧は古沢グループへ移った。それきり、顔を合わせることもなかった。

……今日はついてない。

胸の...

ログインして続きを読む