第89章 誰が後ろ盾でも通用しない

「そういえば、こちらってメンズもありますか?」

「ございますよ、お客様」

店員はにこやかに二階を指さした。

「メンズは2階になります。上をご覧になりますか?」

「うん」

相馬寧はカードを取り出す。

「先にこれ、会計お願い。私は上で少し見てくるから」

「かしこまりました」

店員は服を抱えてレジへ向かった。

――その背中に。

夏目茉莉が、怒気をまとったまま突進してきた。迷いもなく、店員の腕を――バンッ、と叩く。

「わっ……!」

相馬寧が選んだ数着が床へ落ち、ばさりと広がった。

「その人に売らないで!」

夏目茉莉の声はやけに高い。

「この店、私名義じゃなくても、私は夏...

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