第一百零三章 養元

午後五時を過ぎると、銀桔梗研究所B2フロアの廊下はもう静まり返っていた。

一葉は一番奥の実験室のドアを開けた。

この実験室はいかなる公開研究プロジェクトにも属していない。ドアプレートには番号の羅列があるだけだった。

今日ここに来たのは、千世から午前中に緊急メールが届いたからだ。欧州の薬事当局による技術審査報告書を、彼女自身が目を通す必要があった。

三時間かけて注釈を書き終えると、昨晩やり残していた調薬の作業もついでに片付けた。

保管庫の前に立ち、暗証番号を入力して最下段の引き出しを引いた。

中には密封された小さな木箱が二つ。白樺材で、香りは淡かった。

木箱の隣に、二枚の折り畳まれ...

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