第十四章 御影の名

食堂の扉が、背後で静かに閉まった。

廊下は静かで、庭の方角から松の枝を渡る風の音だけが届いていた。一葉は廊下の窓辺でしばらく足を止め、澄乃が自ら植えた紫陽花に視線を落とした。花期は終わりに近く、雨上がりの花びらは色を深め、午後の湿った空気の中で静かに重く垂れていた。

浮島家の物置部屋には、こんな窓の景色はなかった。

その考えは一瞬で過ぎた。名前をつけることなく、彼女は向き直って階段を上った。


二階の自室に戻り、スマートフォンを開いて藤堂一成が昨夜送ってきた検査データを確認した。

テロメラーゼ活性、先月比マイナス〇・三パーセントポイント。

その数字をしばらく見つめた。

〇...

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