第十五章 彼の婚約

夕方、水無瀬邸の夕食はすでに用意されていた。

一葉は玄関で靴を脱いで上がった。廊下にはかすかに出汁の香りが漂っている。食堂の灯りが点いており、惟道と澄乃はすでに席についていた。詩緒は斜め向かいに座り、湯飲みを両手で持ったまま、何かを見るように俯いていた。顔を上げなかった。

一葉は自分の席に腰を下ろした。

惟道がちらりと目を上げ、「お帰り」と一言言って、すぐに手元の新聞へ視線を戻した。澄乃が「お疲れ様」と言い、箸を一葉に渡しながら、もう話題を惟道の方へ向けていた——明日会う客のこと、あるプロジェクトの進捗、他愛のない往来。急ぐでもなく、滞るでもなく。

一葉は今日どこへ行っていたか、説明し...

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