第二十三章 風鈴

一葉が口を開こうとした瞬間、明良の声が病室から聞こえてきた。

「暁弦、どこへ行くんだ?」

暁弦は足を止め、半開きのドアの隙間に目を向けた。老人は枕にもたれ、視線を廊下の方へ向けていた——まるで二人がそこに立っていることを、最初から知っていたかのように。

「一葉さんは今日、食事をしたのか?」

「いただきました。」

明良はひとつ頷き、ゆっくりとした口調で言った。「朝のはカウントに入らん。昼も過ぎた。ちょうどいい、何か食べてきなさい。」気軽な言い方で、老人特有の軽口めいた雰囲気があったが、その気遣いは本物だった。

一葉が用意していた言葉は、喉の手前で止まったまま、出てこなかった。

明良...

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